梅雨も明け、ようやく夏本番の暑さがやってきました。
夏は、厳しい暑さから食欲も落ち、つい喉ごしの良い簡単な食事で済ませてしまうことが多くなります。また、夜更かしなどから生活習慣も乱れやすく、体調も崩しがちになります。夏のウイルス感染症(いわゆる夏風邪)の発症時期は5月から8月で、当院でもこれに該当する患者さんの受診が増えてきました。今回はその代表ともいえる、手足口病・りんご病、そしてヘルパンギーナについてご紹介します。
【 手足口病 】
主な原因ウイルスはコクサッキーA16、エンテロウイルス71型です。4~5日間の潜伏期間を経て、手のひらや足底・口腔粘膜にびらんや小水疱をつくるのが特徴です。約半数の症例で、この皮膚症状の1~2日前に微熱や鼻水などの感冒症状が先行します。
水分補給に注意する以外は、特別な治療を行わなくても自然に治癒し、皮疹は一週間ほどで痕を残さず消失しますが、皮疹が消失しても2~4週間は便中にウイルスが排出されるため、感染源となります。
【 りんご病(伝染性紅斑)】
ヒトパルボウイルスB19による感染症です。潜伏期間は2~4週間で、微熱などの軽い感冒症状につづいて、平手打ちされたような紅斑が、突然両頬に出現します。肩から腕にかけても紅斑が現れ、紅斑どうしがつながりレース状となります。これら皮疹は一週間程度で落屑(らくせつ:ふけ状のこな)や色素沈着を残さずに消退します。飛沫感染(唾液)による経気道感染で、発疹出現時にはすでに感染力はありません。
※ 妊娠20週未満の妊婦が感染すると、胎児水腫や死亡の例がみられるので、妊婦さんは患者に近づかないようにしましょう。
【 ヘルパンギーナ 】
主な原因ウイルスは、コクサッキーA群です。2~4日の潜伏期間を経て、突然の発熱につづいて咽頭痛が出現します。咽頭粘膜の発赤が著しく、主に軟口蓋(なんこうがい:口腔の奥の柔らかい部分)に、粟粒大の紅暈(こううん:ぼんやりと見える紅斑)や、紅暈に囲まれた小水疱を認めます。2~4日程度で解熱し、その後粘膜疹も消失します。口腔内の痛みのために食欲減退、飲水困難から脱水症になることもありますが、ほとんどは予後良好な疾患です。
手足口病とおなじく、症状消退後も2~4週間のやや長期にわたり、便からウイルスが排出されます。
どれも一般的な病気ですが「あれ、ひょっとして?」と思ったら、受診しましょう!