噛めることの重要性【むし歯編】2019年3月
歯科医師植田淳二

歯を失う事できちんと食事ができなくなると、身体に必要な栄養分を獲得する事ができず、その結果として体力低下を認め、怪我や病気になりやすく、高齢になった際に要介護状態に陥る可能性が上昇する事が近年分かってきています。この状況を改善させるために、現在の歯科界では、自分自身の歯を残す事、そしてただ単に残すだけでなく、きちんと食事ができる状態にする事が目標となってきています。

歯を失う大きな原因は「むし歯」「歯周病」が挙げられます。
この2つの細菌による感染症が、歯を失う原因の70%以上を占めています。
「むし歯」になるためのリスク因子として、下の図に示すように4つのリスク因子が挙げられます。

①「宿主」
宿主とは、歯の性質(むし歯のなり易さ、なり難さ)のことです。遺伝や、歯が作られる成長時期の食事内容により個人差が出ると言われています。
むし歯になりにくくするためには、歯磨き粉や洗口液でフッ素が入っている物を使用する事や、定期検診によるフッ素塗布が重要になります。

②「細菌」
むし歯の原因となる細菌に感染する事で、むし歯のリスクが上昇します。様々な清掃器具を用いて口腔内を清潔に保つ事で、むし歯の原因となる細菌感染を防ぐことができます。

③「食事」
むし歯の細菌が活動するためには、スクロースなどの甘味料や糖分が必要となります。むし歯の細菌の活動を活発化させにくい、スクロースに代わる代用甘味料を使用するなど、糖分の摂取を控える事で予防できます。

④「時間」
口腔内は唾液の緩衝作用により中性に保たれています。しかし食事中或いは食後(特に食後30分)はその唾液が食べ物を溶かし、飲み込みやすくするために使用されるので、唾液の緩衝作用の機能が下がり、口の中は酸性となります。この酸性の状態が長く続く事で歯は溶けやすくなり、むし歯になりやすくなります。そのため、ながら食いや、酸性である飲料水(市販されている清涼飲料水のほとんどは酸性である)を飲むなどを控え、食後にはお茶や水などを飲み、口の中が酸性となっている時間を短くしてあげる必要があります。特に小さなお子様の場合、歯が出てきたばかりの頃は、むし歯になりやすいため、食事のあげ方には気を付けて下さい。

以上の4つのリスク因子が重なる事で、むし歯が発症し、進行していきます。

むし歯にならないようにするためには、食事や歯磨きなどの生活習慣の改善と、メンテナンスが重要となります。

 

 

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