むし歯予防に一番大切なのは?2025年3月
歯科医師野中亜弥

日本人が歯を失う二大原因はむし歯と歯周病です。みなさんも歯科はむし歯を治療するところ、というイメージが強いのではないでしょうか。

今回は「むし歯予防に何が大切か」をお話します!

はじめに結論から言うと、一番大切なのは『フッ化物入りの歯磨剤を適切に使う』ことです。その次が『正しい歯みがき』『砂糖の摂取回数の制限』です。

お口の中にはいろいろな種類の細菌が生息しています。その細菌が歯面に集まって作るのがプラークです。これは簡単に言うとお風呂やキッチンの排水口に付着するぬるぬるした汚れと同じような性質のもので、うがいでは落ちません。

わたしたちが糖を食べると、プラークの中の細菌が糖から酸を作ります。その酸が歯を溶かしてむし歯ができます。つまり食事やおやつ、甘い飲み物を飲むたびに歯が溶けていきます。

しかし歯は溶けっぱなしではありません。唾液が酸を中和してお口の中を酸性から中性に戻し、さらには再石灰化を促進して溶けた歯面を修復してくれます。

糖を摂取する回数が少ないと、溶けた歯が修復される時間がしっかりとれるので、下の図のように、むし歯はできにくくなります。


余談ですが、お口がいつも開いていると口腔内が乾燥し、唾液が少なくなります。むし歯・歯周病・歯並びの悪化にもつながりますのでお口はしっかり閉じてお鼻で呼吸しましょう!

では反対に、食べる回数が多いとどうなるでしょうか。

唾液が歯を修復している間にまた糖が口に入ってくると、修復が間に合いません。結果的に歯に穴が開き、むし歯ができてしまうのです。

グミやあめ、キャラメル、チョコレート、クッキーなど砂糖が多く含まれ、さらには歯にくっつきやすかったりお口に長くとどまるお菓子は、とてもむし歯のリスクが高いです。日常的に食べることは避け、食べたら歯をみがきましょう。


最近は特にグミをよく食べるお子さんにむし歯が多発しており心配しています。

ある研究によると甘いものを食べることにより下がってしまったpHを中性に戻すには、10秒間のうがいを15回もする必要があります。そして歯にくっついたお菓子はうがいだけでは取れません。お菓子を食べた後にうがいをするのは、しないよりは良いですが、過信するのはやめましょう。

大人の方でも、砂糖の入ったコーヒーや紅茶をよく飲む方、砂糖入りのガムや飴をよく口にする方はむし歯のリスクが高いです。砂糖の入った飲み物を日常的に飲むことは控えてください。


普段の飲み物は、水・お茶・牛乳・無糖のコーヒーにしましょう。間食にはチーズやナッツ、果物がおすすめです。

プラークはむし歯の直接的な原因です。正しい歯磨きで歯に付いたプラークを除去する、または減らすことが出来れば根本的にむし歯をコントロールすることができます。付着して間もないプラークはあまり酸を作りません。逆に、何日もたった成熟したプラークはポテトチップスのようなデンプン主体であまり甘くない食べ物でもむし歯を作ります。

「ちゃんと歯をみがいているのに・・」というのは診療室でもよく耳にする言葉ですが、「みがいている」「みがけている」は違います。歯ブラシが当たっていない部位は何日もみがいていないのと同じです。


当院では検診に来られた患者様に、磨き残しがある部位をお知らせし、歯みがき指導や使いやすい歯ブラシのご紹介を行っております。自分に合った正しい歯みがき方法を身につけましょう。

ではフッ化物はどのように働くのでしょうか。

フッ化物には歯を強くするなど色々な働きがありますが、一番重要な働きは再石灰化の促進です。通常pHが5.5以下になると歯が溶け始めます。しかしフッ化物が存在すると歯が溶け始めるpHが4.5になります。つまり先ほどのグラフがこのように変化して歯が溶けにくく、修復されやすくなります。

【お口の中にフッ化物が存在するとき】

 

2023年から日本における歯磨剤フッ化物の推奨濃度が下の図の通りに変更されました。

出典:公益社団法人日本小児歯科学会
学会からの提言「4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法」(2023年01月)
https://www.jspd.or.jp/recommendation/article19/

 

実際に日本で市販されている一番高い濃度の歯磨剤は1450ppmです。


6歳以上のお子さんは、大人と同じように1450ppmの歯磨剤が推奨されていますので、ぜひ一日二回しっかり使うようにしてください。使う量は上の図を参考に。(おそらく想像より多いと思います。)


磨き終わったあとは、うがいをしない、もしくはペットボトルのキャップ一杯分くらいの少量の水で一回だけうがいをしてください。お口の中にフッ化物を残すことが大切です!

それに加えて歯科でフッ化物塗布を受けましょう。歯科で塗布するフッ化物濃度は一般的には9000ppmです。


当院ではさらに効果が高い22600ppmのフッ化物塗布も行っております。

歯は生えてから約3年間は表面が未成熟なためむし歯になりやすいです。お子さんには毎日のフッ化物配合歯磨剤の使用に加えて3カ月に一度の歯科医院での高濃度フッ化物塗布がおすすめです。

成人にもフッ化物塗布は効果的です。特に加齢や歯周病によって歯肉がさがっている方は要注意です。歯の根は軟らかくとてもむし歯になりやすいのです。


歯科医院で定期的に検診・クリーニングを受け、フッ化物の塗布をしてもらいましょう。

人生100年時代。お子様の生えたばかりの永久歯はこれから何年使わなければいけないでしょうか?

むし歯は治療すれば終わりではありません。治療しても生活習慣が変わらなければ、またむし歯になってしまいます。むし歯の治療を繰り返す度に、自分の歯質はどんどん減っていきます。そして最終的には歯を残すことが難しくなってしまいます。

歯が残っている本数が多ければ多いほど寿命が長くなることや、歯の本数が少ないと認知症のリスクが高くなるということも報告されています。


ぜひ歯科で定期的に検診を受け、むし歯になりにくいお口の環境を一緒に作っていきましょう!

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